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暮れ果つる秋の形見にしばし見ん
紅葉散らすな木枯らしの風

歌の意味
すっかり暮れ果ててしまう秋の形見として、しばらくは眺めていよう。紅葉を散らしてくれるな、木枯らしの風よ。
鑑賞
秋歌 488

詞書「暮秋」
 詞書「暮秋」は、暮れていく秋を詠む題である。今にも暮れ果ててしまう秋の形見として、しばらくは紅葉を眺めていたい、だから木枯らしの風よ、紅葉を散らしてくれるな、と詠む。去りゆく秋を惜しみ、その名残である紅葉を木枯らしから守りたいと願っている。
 前歌と同じ「木枯らしの風」で結ばれ、前歌が木枯らしを悲しいものと嘆いたのに対し、この歌はその木枯らしに紅葉を散らすなと呼びかけている。本巻の第四百十二首で月を都の形見とした歌と同じく、ここでは紅葉を秋の形見としている。

 初句「暮れ果つる」は、すっかり暮れ果ててしまう、の意で、秋の終わりをいう。
 二句「秋の形見に」は、去っていく秋をしのぶよすがとして、の意である。
 三句「しばし見ん」の「ん」は意志の助動詞「む」で、しばらくは眺めていよう、の意である。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「紅葉散らすな」の「な」は禁止の終助詞で、紅葉を散らすな、の意である。
 結句「木枯らしの風」は呼びかけの対象を示し、前歌の結句と同じ句で結んでいる。

かたみ:離れた人や所、過ぎた時をしのぶよすがとなるもの
くれはつ:すっかり暮れてしまう、終わってしまう
作者
西行
出典
山家集
前の歌
山里は秋の末にぞ思ひ知る かなしかりけり木枯らしの風
次の歌
秋暮るる月並分くる山がつの 心うらやむ今日の夕暮