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惜しめども鐘の音さへ変はるかな
霜にや露を結びかふらん

歌の意味
どれほど惜しんでも、夜明けを告げる鐘の音までが、もう冬の響きに変わってしまったことよ。露を霜へと結び替えているのだろうか。
鑑賞
秋歌 490

詞書「夜すがら秋を惜しむ」
 詞書から、一晩じゅう去りゆく秋を惜しんで詠んだ歌であることがわかる。夜通し秋を惜しんだけれども、明け方に聞こえる鐘の音までもが、もう秋とは違う冬の響きに変わってしまった、草葉に置く秋の露を、冬の霜へと結び替えているのだろうか、と詠む。秋から冬へと季節が移る瞬間を、鐘の音と露から霜への変化とで捉えている。
 本巻の巻末の一首である。巻頭の第二百五十四首が梢を吹く風の気配で秋の訪れを知ったのに対し、巻末のこの歌は鐘の音の変化と、露が霜に変わる気配とで秋の去るのを知っており、目に見えないものの変化で季節の境を感じ取る点で、巻頭と巻末とが呼応している。

 初句「惜しめども」は、去りゆく秋を惜しむけれども、の意で、詞書の「夜すがら秋を惜しむ」を受けている。
 二句「鐘の音さへ」の「さへ」は添加の副助詞で、ほかのものだけでなく鐘の音までも、の意である。
 三句「変はるかな」は、変わってしまったことよ、の意で、「かな」は詠嘆である。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「霜にや露を」の「や」は疑問の係助詞で、結句の「らん」と呼応する。霜へと露を、の意である。
 結句「結びかふらん」の「結ぶ」は露や霜が生じる意、「かふ」は替える意で、露を霜に結び替えているのだろうか、と推し量り、秋から冬への移りを示して巻を結んでいる。

むすびかふ:結び替える、ここでは露を霜に変えること
作者
西行
出典
山家集
前の歌
秋暮るる月並分くる山がつの 心うらやむ今日の夕暮
次の歌
夜もすがら惜しげなく吹く嵐かな わざと時雨の染むる梢を