夜もすがら惜しげなく吹く嵐かな
わざと時雨の染むる梢を
- 歌の意味
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一晩じゅう、惜しげもなく吹き荒れる嵐であることよ。時雨がわざわざ染めあげた梢の紅葉を。
- 鑑賞
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冬歌 491
詞書「長楽寺にて、夜紅葉を思ふと言ふことを人々詠みけるに」
詞書から、京の東山にある長楽寺で、人々が「夜紅葉を思ふ」という題で歌を詠んだ折の作であることがわかる。夜の闇で見えない紅葉を、夜通し吹きつける嵐の音を聞きながら思いやり、時雨がわざわざ手をかけて染めた梢の紅葉を、嵐は少しも惜しむ様子もなく吹き散らしてしまう、と嘆く歌である。
冬の部の巻頭に置かれた一首である。巻第三の巻末の第四百九十首が、露が霜に変わる気配で秋の去るのを詠んで結ばれていたのを受け、本巻は秋の名残である紅葉を吹き散らす嵐から始まり、秋から冬への受け渡しとなっている。
初句「夜もすがら」は、一晩じゅう、夜通し、の意で、題の「夜」に当たる。
二句「惜しげなく吹く」は、惜しむ様子もなく吹く、の意で、紅葉を散らすことを少しもためらわない嵐の激しさをいう。
三句「嵐かな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、ここで句切れとなる三句切れの歌である。
四句「わざと時雨の」の「わざと」は、わざわざ、ことさらに、の意である。時雨は木の葉を紅葉させるものとされ、その時雨が手をかけて染めたことを強調している。
結句「染むる梢を」は、染めた梢の紅葉を、の意で、二句の「吹く」の対象を後に置いた倒置となっている。題の「紅葉」に当たる。
しぐれ:秋の末から冬の初めにかけて、降ったりやんだりする小雨
こずゑ:木の幹や枝の先の部分
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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惜しめども鐘の音さへ変はるかな 霜にや露を結びかふらん
- 次の歌
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寝覚めする人の心をわびしめて 時雨るる音は悲しかりけり