古典和歌stream

寝覚めする人の心をわびしめて
時雨るる音は悲しかりけり

歌の意味
夜中に目を覚ましている人の心をわびしい思いにさせて、時雨の降る音は悲しいものであることだ。
鑑賞
冬歌 492

詞書「題しらず」
 夜半にふと目覚めた人の心を、いっそうわびしい気持ちにさせる時雨の音の悲しさを詠む。時雨は冬の初めに降ったりやんだりする雨で、静まりかえった夜にその音を聞くことで、寝覚めの寂しさがさらに深まると捉えている。
 前歌が夜通し吹く嵐を詠んだのに続き、この歌も夜に聞く音を詠み、嵐の音から時雨の音へと移っている。本巻の第四百九十六首も、寝覚めの床に聞こえる時雨のような音を詠んでおり、同じ寝覚めの場面が繰り返される。

 初句「寝覚めする」は、夜中に目を覚ます、の意である。
 二句「人の心を」の「人」は寝覚めしている人で、詠み手自身を含んでいる。
 三句「わびしめて」の「わびしむ」は、わびしい思いをさせる、の意で、時雨の音が人の心に働きかけることをいう。
 四句「時雨るる音は」の「時雨る」は、時雨が降る、の意の動詞で、その連体形に「音」が続いている。
 結句「悲しかりけり」の「けり」は詠嘆の助動詞で、時雨の音の悲しさにあらためて気づいた感慨を表して結ぶ。

ねざめ:夜中や明け方に目を覚ますこと
わびしむ:わびしい思いをさせる
しぐる:時雨が降る
作者
西行
出典
山家集
前の歌
夜もすがら惜しげなく吹く嵐かな わざと時雨の染むる梢を
次の歌
霜うづむ葎が下のきりぎりす あるかなきかの声聞こゆなり