道もなし宿は木の葉に埋もれて
まだきせさする冬籠りかな
- 歌の意味
-
道もない。住まいは散った木の葉に埋もれて、まだその時期でもないのに早くもさせられる冬籠りであることよ。
- 鑑賞
-
冬歌 494
詞書「山家落葉」
題「山家落葉」は、山里の住まいに散る木の葉を詠む題である。山里の住まいが落ち葉に埋もれ、通う道さえ見えなくなってしまった。まだ雪も降らないうちから、木の葉によって冬籠りをさせられてしまう、と詠む。冬籠りは雪によるものとするのが普通であるが、それを落ち葉によるものとしたところに趣向がある。
本巻の第五百三十首では、降る雪に道しるべの柴まで埋もれて思いがけない山で冬籠りすることを詠んでおり、木の葉と雪という異なるものによって同じ冬籠りを詠む対応がある。
初句「道もなし」は、道もない、の意で、ここで句切れとなる初句切れの歌である。
二句「宿は木の葉に」の「宿」は住まいのことで、「に」は原因を示し、木の葉によって、の意である。
三句「埋もれて」は、すっかり覆われて見えなくなって、の意である。
四句「まだきせさする」の「まだき」は、まだその時期にならないうちに、の意である。「せさする」は「す」に使役の「さす」が付いた形で、木の葉が冬籠りをさせることをいう。
結句「冬籠りかな」は、冬の間家にこもって過ごすことで、「かな」は詠嘆である。体言に「かな」を添えて結んでいる。
ふゆごもり:冬の間、家にこもって過ごすこと
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
霜うづむ葎が下のきりぎりす あるかなきかの声聞こゆなり
- 次の歌
-
木の葉散れば月に心ぞあらはるる 深山隠れに住まんと思ふに