山おろしの月に木の葉を吹きかけて
光にまがふ影を見るかな
- 歌の意味
-
山から吹き下ろす風が月に向かって木の葉を吹きかけて、月の光と入りまじって見分けのつかない木の葉の影を見ることだ。
- 鑑賞
-
冬歌 499
詞書「月前落葉」
題「月前落葉」は、月の前に散る木の葉を詠む題である。山から吹き下ろす風が木の葉を吹き上げ、月にかかるように舞わせるので、月の光と舞い散る木の葉の影とが入りまじって見える、と詠む。月の前を散る木の葉のさまを、光と影の交錯として捉えている。
本巻の第四百九十五首が、木の葉が散り尽くしたあとに差し込む月の光を詠んだのに対し、この歌は散りつつある木の葉と月の光とを同時に捉えている。
初句「山おろしの」は六音の字余りで、山から吹き下ろす風が、の意である。
二句「月に木の葉を」は、月に向かって木の葉を、の意で、月を目がけて吹きつけるように詠んでいる。
三句「吹きかけて」は、吹きつけて、の意で、風の勢いを示している。
四句「光にまがふ」の「まがふ」は、入りまじって見分けがつかなくなる、の意で、月の光と木の葉の影が入りまじるさまをいう。
結句「影を見るかな」の「影」は光の中に見える木の葉の姿で、「かな」は詠嘆である。
やまおろし:山から吹き下ろす激しい風
まがふ:入りまじって見分けがつかなくなる
かげ:ここでは月の光の中に見える木の葉の姿
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
嵐掃く庭の木の葉の惜しきかな まことの塵に成りぬと思へば
- 次の歌
-
木枯らしに峰の木の葉やたぐふらん 村濃に見ゆる滝の白糸