木枯らしに峰の木の葉やたぐふらん
村濃に見ゆる滝の白糸
- 歌の意味
-
木枯らしに連れられて、峰の木の葉が一緒に落ちているのだろうか。濃いところと薄いところがまだらに見える、滝の白糸であることよ。
- 鑑賞
-
冬歌 500
詞書「滝上落葉」
題「滝上落葉」は、滝の上に散る木の葉を詠む題である。白い糸のように流れ落ちる滝が、ところどころ色の濃いまだら染めのように見えるのは、木枯らしに連れられて峰の木の葉が一緒に落ちてくるからだろうか、と推し量る歌である。滝を白糸に、落ち葉のまじるさまを村濃の染め物に見立てている。
本巻の第五百五十五首も結句を「滝の白糸」とし、そちらは氷によって流れの止まった滝を詠んでいる。落ち葉で色づいて流れる滝と、氷で動かなくなった滝とが対応している。
初句「木枯らしに」の「木枯らし」は、秋の末から冬の初めに吹く冷たく強い風である。
二句「峰の木の葉や」の「や」は疑問の係助詞で、三句の「らん」と係り結びをなしている。
三句「たぐふらん」の「たぐふ」は、連れ立つ、伴う、の意である。「らん」は現在推量の助動詞の連体形で、ここで句切れとなる三句切れの歌である。
四句「村濃に見ゆる」の「村濃」は、同じ色で濃い部分と薄い部分をまだらに染めた染め方で、落ち葉のまじる滝の流れを染め物にたとえている。
結句「滝の白糸」は体言止めで、白い糸のように流れ落ちる滝を示して結ぶ。
こがらし:秋の末から冬の初めに吹く冷たく強い風
たぐふ:連れ立つ、伴う
むらご:同じ色で濃い部分と薄い部分をまだらに染めた染め方
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
山おろしの月に木の葉を吹きかけて 光にまがふ影を見るかな
- 次の歌
-
宿囲ふ柞の柴の時雨さへ 慕ひて染むる初時雨かな