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難波江の汀の葦に霜冴えて
浦風寒き朝ぼらけかな

歌の意味
難波江の水際の葦に霜が冷たく凍りついて、浦を吹く風の寒い明け方であることよ。
鑑賞
冬歌 510

詞書「冬歌詠みけるに」
 冬の歌を詠んだ折の作で、同じ詞書のもとに四首が続くうちの一首目である。難波江の水際に生える葦に霜が冷たく置き、入り江を吹きわたる風が寒々しい夜明けの景色を詠む。葦の名所である難波江を舞台に、冬の夜明けの冷え込みを捉えている。
 本巻の第五百十四首も、霜にあって色の変わった葦の穂を難波江の浦とともに詠んでおり、同じ難波江の葦と霜とを取り合わせている。

 初句「難波江の」の「難波江」は摂津国の難波の入り江で、葦の名所として知られた歌枕である。
 二句「汀の葦に」の「汀」は水際のことである。
 三句「霜冴えて」の「冴ゆ」は、冷え込む、凍る、の意で、霜が冷たく置いたさまをいう。
 四句「浦風寒き」の「浦風」は、入り江や海辺を吹く風である。
 結句「朝ぼらけかな」の「朝ぼらけ」は、夜がほのぼのと明けるころで、「かな」は詠嘆である。

なにはえ:摂津国の難波の入り江で、葦の名所
みぎは:水際
さゆ:冷え込む、凍る
あさぼらけ:夜がほのぼのと明けるころ
作者
西行
出典
山家集
前の歌
霜枯れてもろく砕くる荻の葉を 荒く分くなる風の音かな
次の歌
玉かけし花の姿も衰へて 霜をいただく女郎花かな