人来ばと思ひて雪を見るほどに
しか跡付くることもありけり
- 歌の意味
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人が来たならば雪が踏まれてしまうと思いながら雪を眺めているうちに、鹿がそのように足跡を付けることもあったのだなあ。
- 鑑賞
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冬歌 533
詞書「雪に庵埋みて、せんかたなくおもしろかりけり、今も来たらば、と詠みけんこと思ひ出でて、見けるほどに、鹿の分けて通りけるを見て」
詞書から、雪が庵を埋めてどうしようもなく趣深かったので、「今も来たらば」と詠んだ歌を思い出しながら雪を眺めていたところ、鹿が雪を分けて通っていったのを見て詠んだ歌であることがわかる。人が訪ねてきたら雪が踏まれてしまう、と案じながら雪を見ていると、人ではなく鹿が雪に足跡を付けていった、と詠む。人の足跡を惜しんでいたところへ鹿が跡を付けたという意外さと、それをおもしろがる心を捉えている。
詞書の「今も来たらば」は、『詞花和歌集』の和泉式部の歌「待つ人の今も来たらばいかがせむ踏ままく惜しき庭の雪かな」を指す。前歌と同じく、庭の雪に足跡が付くことを惜しむ心を詠み継いでいる。
初句「人来ばと」の「来ば」は、来たならば、の意で、「ば」は仮定条件を示している。
二句「思ひて雪を」は、思って雪を、の意で、人の足跡が付くことを案じる心をいう。
三句「見るほどに」の「ほどに」は、〜しているうちに、の意である。
四句「しか跡付くる」の「しか」は、動物の鹿の意と、そのように、の意の「然」とを掛けた掛詞である。人の代わりに鹿がそのように跡を付けた、の意となる。
結句「こともありけり」の「けり」は、それと気づいた詠嘆の助動詞で、そういうこともあったのだなあ、と意外さを示して結ぶ。
しか:動物の鹿の意と、そのように、の意の「然」を掛ける
いほり:草木で作った粗末な住まい
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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我が宿に庭よりほかの道もがな 訪ひ来ん人の跡付けで見ん
- 次の歌
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跡留むる駒の行方はさもあらばあれ うれしく君にゆきにあひぬる