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瀬戸渡る棚無し小舟心せよ
霰乱るるしまき横切る

歌の意味
瀬戸を渡っていく棚無し小舟よ、気をつけよ。霰が乱れ降る激しい風が横切って吹いていく。
鑑賞
冬歌 544

詞書「舟中霰」
 題「舟中霰」は、舟の上で出あう霰を詠む題である。狭い海峡を渡っていく、船棚もない小さな舟に向かって、気をつけよ、霰を乱れ降らせる激しい風が海を横切って吹いてくる、と呼びかける歌である。荒れる冬の海と、そこを渡る小舟の危うさを、緊迫した調子で捉えている。
 棚無し小舟は古くから和歌に詠まれた語で、小さく頼りない舟の象徴として用いられている。

 初句「瀬戸渡る」の「瀬戸」は、両側から陸地が迫った狭い海峡である。
 二句「棚無し小舟」の「棚無し小舟」は、船棚のない小さな舟である。呼びかけの対象となっている。
 三句「心せよ」は、気をつけよ、の意で、小舟への呼びかけである。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「霰乱るる」は、霰が乱れ降る、の意で、「乱るる」は連体形として結句の「しまき」にかかる。
 結句「しまき横切る」の「しまき」は、雪や雨を伴って激しく吹きまくる風である。風が海を横切って吹くさまを示し、気をつけよと呼びかけた理由を述べて結ぶ。

せと:両側から陸地が迫った狭い海峡
たななしをぶね:船棚のない小さな舟
しまき:雪や雨を伴って激しく吹きまくる風
作者
西行
出典
山家集
前の歌
訪へな君夕暮れになる庭の雪を 跡なきよりはあはれならまし
次の歌
杣人の槙の仮屋のあだ臥しに 音するものは霰なりけり