ただは落ちで枝を伝へる霰かな
つぼめる花の散る心地して
- 歌の意味
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まっすぐには落ちないで、枝を伝って転がっていく霰であることよ。つぼんでいる花が散っていくような心地がして。
- 鑑賞
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冬歌 546
詞書「桜の木に霰のたばしりけるを見て」
詞書から、桜の木に霰が勢いよく飛び散って当たったのを見て詠んだ歌であることがわかる。霰がそのまままっすぐには落ちず、桜の枝を伝って転がり落ちていくさまが、まだつぼみの花が散っていくように見える、と詠む。枝を転がる白く小さな霰の粒を、桜のつぼみに見立てている。
本巻の第五百十二首が、初雪の降り積もった山桜を花が咲いたと見立てたのに対し、この歌は桜の枝を伝う霰をつぼみの散るさまと見ており、桜の木に冬の降り物を重ねる趣向が共通している。
初句「ただは落ちで」は六音の字余りで、「で」は打消の接続助詞である。まっすぐにはそのまま落ちないで、の意である。
二句「枝を伝へる」の「伝ふ」は、伝って移っていく、の意で、「る」は存続の助動詞「り」の連体形である。
三句「霰かな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、ここで句切れとなる三句切れの歌である。
四句「つぼめる花の」の「つぼむ」は、花がつぼみの状態である、の意で、「る」は存続の助動詞「り」の連体形である。
結句「散る心地して」は、散っていく心地がして、の意で、霰をつぼみの散るさまに見立てて結ぶ。三句までと倒置の関係にある。
たばしる:勢いよく飛び散る
つたふ:伝って移っていく
つぼむ:花がつぼみの状態である
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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杣人の槙の仮屋のあだ臥しに 音するものは霰なりけり
- 次の歌
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限りあらん雲こそあらめ炭竃の 煙に月のすすけぬるかな