冴ゆれども心安くぞ聞き明かす
川瀬の千鳥友具してけり
- 歌の意味
-
冷え込むけれども、安らかな気持ちで夜通し聞き明かすことだ。川瀬の千鳥は友を連れていたのだなあ。
- 鑑賞
-
冬歌 551
詞書は前の歌に続き「千鳥」
「千鳥」の題で詠まれた五首のうちの四首目である。夜は冷え込むけれども、川瀬で鳴く千鳥が独りではなく友を連れているとわかったので、その声を安らかな気持ちで夜通し聞き明かした、と詠む。千鳥が仲間と連れ立っていることに、聞く者の心も慰められている。
前歌が浦風のつらさを知るかのように鳴く海辺の千鳥を詠んだのに対し、この歌は友を連れた川瀬の千鳥を詠んでおり、わびしさと安らぎ、海辺と川瀬とが対になっている。
初句「冴ゆれども」の「冴ゆ」は冷え込む意で、「ども」は逆接である。冷え込むけれども、の意である。
二句「心安くぞ」の「心安し」は安らかな気持ちである意で、「ぞ」は強意の係助詞として三句の連体形「明かす」と係り結びをなしている。
三句「聞き明かす」の「聞き明かす」は、夜通し聞いて夜を明かす、の意である。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
四句「川瀬の千鳥」の「川瀬」は川の浅瀬のことで、海辺の千鳥を詠んだ前の歌々と対比されている。
結句「友具してけり」の「具す」は、連れ立つ、伴う、の意で、「てけり」は完了と気づきの詠嘆である。安らかに聞けた理由を示して結ぶ。
ききあかす:夜通し聞いて夜を明かす
かはせ:川の浅瀬
ぐす:連れ立つ、伴う
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
霜冴えて汀更けゆく浦風を 思ひ知りげに鳴く千鳥かな
- 次の歌
-
やせ渡る湊の風に月更けて 潮干るかたに千鳥鳴くなり