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夜もすがらあらしの山に風冴えて
大井の淀に氷をぞ敷く

歌の意味
一晩じゅう嵐山に風が冷たく吹きつけて、大井川の淀みに氷を一面に張りつめている。
鑑賞
冬歌 561

詞書は前の歌に続き「冬歌十首」
 「冬歌十首」の五首目である。一晩じゅう、名のとおり激しい風の吹く嵐山に冷たい風が吹きつけて、そのふもとを流れる大井川の流れの緩やかな淀みに、一面に氷を張りつめた、と詠む。山の名の「嵐」に風の激しさを重ねて、冬の夜の厳しい冷え込みを捉えている。
 本巻の第五百二十二首も結句を「氷をぞ敷く」とし、そちらは庭に差す月の光を氷に見立てている。見立ての氷と本当の氷とが対応している。また初句「夜もすがら」は、本巻の巻頭の第四百九十一首の初句と同じで、夜通し吹く嵐を詠む点でも呼応している。

 初句「夜もすがら」は、一晩じゅう、夜通し、の意で、本巻の巻頭の第四百九十一首と同じ初句である。
 二句「あらしの山に」の「あらし」は、激しい風の「嵐」と、山の名の「嵐山」とを掛けた掛詞である。
 三句「風冴えて」の「冴ゆ」は、冷え込む、の意で、風が冷たく吹くことをいう。
 四句「大井の淀に」の「大井」は、嵐山のふもとを流れる大井川、「淀」は川の水がよどんで流れの緩やかな所である。
 結句「氷をぞ敷く」の「ぞ」は強意の係助詞で、連体形「敷く」と係り結びをなしている。本巻の第五百二十二首と同じ結句である。

あらし:激しい風の「嵐」と、山の名の「嵐山」を掛ける
おほゐ:嵐山のふもとを流れる大井川
よど:川の水がよどんで流れの緩やかな所
しく:一面に広がる、敷きつめる
作者
西行
出典
山家集
前の歌
冴ゆる夜はよその空にぞ鴛も鳴く 凍りにけりな昆陽の池水
次の歌
冴え渡る浦風いかに寒からん 千鳥群れゐるゆふさきの浦