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吉野山麓に降らぬ雪ならば
花かと見てや尋ね入らまし

歌の意味
吉野山の雪が、麓には降らない雪であったならば、花かと思って山の奥へ尋ね入っただろうに。
鑑賞
冬歌 565

詞書は前の歌に続き「冬歌十首」
 「冬歌十首」の九首目である。吉野山の峰に白く見えるものが、もし麓には降らない雪であったならば、桜の花が咲いたのかと思って山の奥まで尋ね入っただろうに、と詠む。麓にも雪が降っているので、峰の白さも雪だとわかってしまう、という反実仮想の形で、吉野の雪を桜に重ねている。
 本巻の第五百十二首が吉野の山桜に初雪の降るさまを花が咲いたと詠み、次の第五百六十七首も木々に積もる雪を花に見立てている。吉野の雪を桜に重ねる趣向が本巻で繰り返されている。

 初句「吉野山」の「吉野山」は大和国の山で、桜の名所として知られる歌枕である。
 二句「麓に降らぬ」は、麓には降らない、の意で、「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形である。
 三句「雪ならば」の「ば」は、未然形に付いて仮定条件を示し、雪であったならば、の意である。
 四句「花かと見てや」の「や」は疑問の係助詞で、結句の「まし」と呼応している。花かと思って、の意である。
 結句「尋ね入らまし」の「尋ね入る」は探し求めて分け入る意で、「まし」は反実仮想の助動詞である。尋ね入っただろうに、と実際にはそうしないことを示して結ぶ。

たづねいる:探し求めて分け入る
作者
西行
出典
山家集
前の歌
風冴えて寄すればやがて凍りつつ 返る波なき志賀の唐崎
次の歌
山ごとに寂しからじと励むべし 煙こめたり小野の山里