山ごとに寂しからじと励むべし
煙こめたり小野の山里
- 歌の意味
-
どの山でも、寂しくはあるまいと炭焼きに精を出しているにちがいない。煙が一面にたちこめている、小野の山里であることよ。
- 鑑賞
-
冬歌 566
詞書は前の歌に続き「冬歌十首」
「冬歌十首」の十首目で、連作の最後の一首である。炭を焼く里として知られた小野の山里では、どの山でも、寂しくなどあるまいと、人々が炭焼きに精を出しているにちがいない。炭竃の煙が一面にたちこめている、と詠む。寂しさが繰り返し詠まれてきた連作を、人々の営みの煙によって結んでいる。
本巻の第五百四十七首も炭竃の煙を詠んでおり、炭焼きの煙という山里の冬の景物が二首に取り上げられている。また連作の一首目の第五百五十七首が山里の寂しさを詠み起こしたのに対し、この十首目は寂しくはあるまいと人の営みを示して結んでおり、連作の初めと終わりとが呼応している。
初句「山ごとに」の「ごとに」は、〜のたびに、どの〜にも、の意で、どの山でも、の意である。
二句「寂しからじと」の「じ」は打消推量の助動詞で、寂しくはあるまい、の意である。
三句「励むべし」の「励む」は精を出す意で、「べし」は推量の助動詞である。精を出しているにちがいない、の意で、ここで句切れとなる三句切れの歌である。
四句「煙こめたり」の「こむ」は、たちこめる、の意で、「たり」は存続の助動詞である。炭焼きの煙がたちこめていることをいう。ここでも句切れとなる。
結句「小野の山里」の「小野」は山城国の地名で、炭焼きの里として知られた。体言止めで、連作を結んでいる。
はげむ:精を出す、懸命に努める
こむ:中にいっぱいに満ちる、たちこめる
をの:山城国の地名で、炭焼きの里として知られた
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
吉野山麓に降らぬ雪ならば 花かと見てや尋ね入らまし
- 次の歌
-
山桜思ひよそへてながむれば 木ごとの花は雪まさりけり