逢はざらんことをば知らで帚木の
伏屋と聞きて尋ね来にけり
- 歌の意味
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逢ってはもらえないだろうということを知らないで、帚木のある伏屋だと聞いて、はるばる訪ねて来てしまったことだ。
- 鑑賞
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恋歌 578
詞書「聞名尋恋」
題「聞名尋恋」は、名を聞いただけの人を訪ねてゆく恋を詠む題である。帚木は信濃国園原の伏屋にあったという伝説の木で、遠くからは見えるのに近づくと消えてしまうとされた。その伏屋に住む人と聞いて訪ねて来たが、相手は帚木のように近づけば姿を隠して逢ってくれないものだとは知らなかった、と詠む。噂だけを頼りに訪ねた恋のむなしさを、帚木の伝説に重ねている。
帚木の伝説は、坂上是則の作と伝える「園原や伏屋に生ふる帚木の」の歌によって広く知られ、ありそうで逢えない人のたとえとして詠み継がれた。恋の部の冒頭に置かれた一首であり、まだ見ぬ人を名を聞いて訪ねるところから、恋の歌々が始まっている。
初句「逢はざらん」は、逢わないだろう、の意で、「ざら」は打消の助動詞「ず」の未然形、「ん」は推量の助動詞である。
二句「ことをば知らで」の「で」は打消の接続助詞で、知らないままで、の意である。
三句「帚木の」の「帚木」は、遠くからは見えて近づくと見えなくなるという伝説の木で、逢えそうで逢えない相手を暗示している。
四句「伏屋と聞きて」の「伏屋」は帚木があるとされた信濃国園原の地名である。題の「聞名」に当たる。
結句「尋ね来にけり」の「けり」は気づきの詠嘆で、訪ねて来てしまったことよ、と自らのうかつさを嘆いて結ぶ。題の「尋」に当たる。
ははきぎ:信濃国園原の伏屋にあったという伝説の木、遠くからは見えて近づくと見えなくなるという
ふせや:信濃国園原の地名、帚木の生える所とされた
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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いつか我昔の人と言はるべき 重なる年を送り迎へて
- 次の歌
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立て初めて帰る心は錦木の 千束待つべき心地こそせね