立て初めて帰る心は錦木の
千束待つべき心地こそせね
- 歌の意味
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錦木を立てはじめたばかりで帰ってゆく心は、錦木が千束になるまで待っていられるような気持ちなど、とてもしないことだ。
- 鑑賞
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恋歌 579
詞書「自門帰恋」
題「自門帰恋」は、恋しい人の家の門まで行きながら、逢えずに帰る恋を詠む題である。陸奥には、男が思う女の家の門に錦木を立て、女が受け入れればそれを家に取り入れ、受け入れなければ男は千束になるまで立て続けたという風習が伝えられていた。この歌では、錦木を立てはじめたばかりで帰ってゆく自分には、千束になるまで待ち続けられる気持ちなど到底ない、と詠み、門前から帰るつらさと待ちきれない恋心を表している。
初句「立て初めて」は、錦木を立てはじめて、の意である。
二句「帰る心は」は、門前から逢えずに帰ってゆく心は、の意で、題の「自門帰」に当たる。
三句「錦木の」の「錦木」は、陸奥の風習で男が女の家の門に立てたという彩色した木である。初句の「立て」と結びついている。
四句「千束待つべき」の「千束」は錦木が千束になることで、それまで待つことができる、の意である。
結句「心地こそせね」は、そういう気持ちはまったくしない、の意で、係助詞「こそ」と打消の助動詞「ず」の已然形「ね」が係り結びをなしている。
にしきぎ:陸奥の風習で、男が思う女の家の門に立てたという彩色した木
ちつか:千の束、錦木を千束まで立てたという
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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逢はざらんことをば知らで帚木の 伏屋と聞きて尋ね来にけり
- 次の歌
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おぼつかないかにと人のくれはとり あやむるまでに濡るる袖かな