おぼつかないかにと人のくれはとり
あやむるまでに濡るる袖かな
- 歌の意味
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気がかりなことだ。どうしたのかと人が怪しむほどまでに、涙に濡れる私の袖であることよ。
- 鑑賞
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恋歌 580
詞書「涙顕恋」
題「涙顕恋」は、隠していた恋が涙によって人に知られてしまうことを詠む題である。どうしたのかと周りの人が怪しむほどに袖が涙で濡れてしまい、忍ぶ恋が知られてしまうのではないかと案じる心を詠む。「くれはとり」は綾を織る織り手をいい、「あや」を導く枕詞として「あやむる」に続けている。
初句「おぼつかな」は、本文では「おはつかな」と記されるが、「おぼつかな」の意に解する。気がかりだ、心もとない、の意の「おぼつかなし」の語幹で、詠嘆を表す。ここで句切れとなる初句切れの歌である。
二句「いかにと人の」は、どうしたのかと人が、の意で、周りの人の目を示している。
三句「くれはとり」は、綾を織る織り手をいう語で、綾の「あや」と同音の「あやむる」を導く枕詞である。
四句「あやむるまでに」の「あやむ」は、怪しむ、不審に思う、の意である。
結句「濡るる袖かな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、涙に濡れる袖を嘆いて結ぶ。題の「涙顕」に当たる。
くれはとり:綾を織る織り手、「あや」にかかる枕詞
あやむ:怪しむ、不審に思う
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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立て初めて帰る心は錦木の 千束待つべき心地こそせね
- 次の歌
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なかなかに夢に嬉しき逢ふことは うつつに物を思ふなりけり