なかなかに夢に嬉しき逢ふことは
うつつに物を思ふなりけり
- 歌の意味
-
かえって、夢の中で嬉しく逢うということは、目覚めた現実で物思いをすることになるのであった。
- 鑑賞
-
恋歌 581
詞書「夢会恋」
題「夢会恋」は、夢の中で恋しい人に逢う恋を詠む題である。夢で逢えたことは嬉しいが、目覚めてみればそれが夢にすぎなかったことで、かえって現実の物思いが深まってしまう、と詠む。夢の喜びと現実の苦しみとを対比させている。
この題では次歌の第五百八十二首、第五百八十三首と三首が並び、夢と現実の関係を角度を変えて詠み継いでいる。
初句「なかなかに」は、かえって、なまじっか、の意で、夢で逢えたことがかえって苦しみを招くことを示す。
二句「夢に嬉しき」は、夢の中で嬉しい、の意で、題の「夢会」に当たる。
三句「逢ふことは」は、逢うということは、の意である。
四句「うつつに物を」の「うつつ」は、目覚めている現実のことで、二句の「夢」と対になっている。
結句「思ふなりけり」の「なりけり」は、それと気づいた詠嘆で、物思いをすることになるのだった、と結ぶ。
うつつ:目覚めている状態、現実
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
おぼつかないかにと人のくれはとり あやむるまでに濡るる袖かな
- 次の歌
-
逢ふと見ることを限れる夢路にて 覚むる別れのなからましかば