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夢とのみ思ひなさるるうつつこそ
あひ見しことのかひなかりけれ

歌の意味
ただ夢だったとばかり思えてしまう現実こそ、逢うことができたかいもないことであった。
鑑賞
恋歌 583

詞書は前の歌に続き「夢会恋」
 本当に逢ったはずの現実が、あまりにはかなく、ただ夢であったかのように思えてしまう。それでは逢ったかいもないことだ、と嘆く歌である。
 前の二首が夢での逢瀬を詠んだのに対し、この歌は現実の逢瀬が夢のように思われることを詠み、夢と現実の立場を反転させて三首を結んでいる。

 初句「夢とのみ」は、ただ夢であったとばかり、の意である。
 二句「思ひなさるる」の「思ひなす」は、そう思い込む、の意で、「るる」は自発の助動詞である。自然とそう思われてしまうことをいう。
 三句「うつつこそ」の「うつつ」は現実のことで、係助詞「こそ」が結句の已然形「けれ」と係り結びをなしている。
 四句「あひ見しことの」は、逢ったということの、の意で、「あひ見る」は男女が契りを結ぶことをいう。
 結句「かひなかりけれ」は、そのかいもなかったことよ、の意で、三句の「こそ」を受けて已然形で結ぶ。

おもひなす:そうだと思い込む
あひみる:男女が逢って契りを結ぶ
作者
西行
出典
山家集
前の歌
逢ふと見ることを限れる夢路にて 覚むる別れのなからましかば
次の歌
今朝よりぞ人の心はつらからで 明けはなれゆく空を恨むる