ことづけて今朝の別れをやすらはん
時雨をさへや袖にかくべき
- 歌の意味
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時雨を口実にして、今朝の別れをためらっていよう。涙ばかりか、時雨までも袖に受けて帰るべきだろうか。
- 鑑賞
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恋歌 589
詞書「帰る朝の時雨」
題「帰る朝の時雨」は、恋人のもとから帰る朝に時雨が降ることを詠む題である。時雨を口実にして別れを少しでも延ばしていよう、別れの涙で濡れる袖に、時雨までかけて帰ることはあるまい、と詠む。別れのつらさを時雨にかこつけて言い表している。
前歌が霧にこもってためらったのに対し、この歌は時雨を口実にためらっており、二首で同じ「やすらはん」を三句と初句に置き分けている。
初句「ことづけて」の「ことづく」は、口実にする、かこつける、の意で、時雨を口実にして、ということである。
二句「今朝の別れを」は、恋人のもとから帰る今朝の別れを、の意で、題の「帰る朝」に当たる。
三句「やすらはん」は、ためらっていよう、の意で、ここで句切れとなる三句切れの歌である。前歌の初句と同じ語を用いている。
四句「時雨をさへや」の「さへ」は添加の副助詞で、涙に加えて時雨までも、の意である。「や」は反語を表し、結句の「べき」と係り結びをなしている。題の「時雨」に当たる。
結句「袖にかくべき」は、袖にかけるべきだろうか、いやそうではない、の意で、「や」を受けて連体形で結ぶ。
ことづく:口実にする、かこつける
しぐれ:秋の末から冬の初めにかけて、降ったりやんだりする小雨
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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やすらはん大方の夜は明けぬとも 闇とか言へる霧にこもりて
- 次の歌
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つらくとも逢はずは何のならひにか 身のほど知らず人を恨みん