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つらくとも逢はずは何のならひにか
身のほど知らず人を恨みん

歌の意味
たとえあの人が冷淡であっても、一度も逢わなかったのであれば、何の習いがあって、身のほども知らずにあの人を恨んだりしようか。
鑑賞
恋歌 590

詞書「逢不遭恋」
 題「逢不遭恋」は、一度は逢ったものの、その後は逢えなくなった恋を詠む題である。一度逢ったことがあるからこそ、逢えなくなった今、身のほども知らずにあの人を恨んでしまう、もし一度も逢わなかったならば恨む理由もなかったのに、と詠む。一度の逢瀬がかえって恨みのもとになっているという、恋の矛盾を捉えている。

 初句「つらくとも」は、あの人が冷淡であっても、の意で、「とも」は逆接の仮定条件を表す。
 二句「逢はずは」は、もし一度も逢わなかったならば、の意である。
 三句「何のならひにか」の「ならひ」は習慣、慣れのことで、何に慣れたというので、の意である。係助詞「か」が結句の「ん」と係り結びをなし、反語を表している。
 四句「身のほど知らず」は、自分の身分や立場をわきまえないで、の意である。
 結句「人を恨みん」は、あの人を恨んだりしようか、いや恨みはしない、の意で、「か」を受けて連体形で結ぶ。

ならひ:習慣、慣れ
みのほど:自分の身分や立場
作者
西行
出典
山家集
前の歌
ことづけて今朝の別れをやすらはん 時雨をさへや袖にかくべき
次の歌
さらばたださらでぞ人のやみなまし さて後もさはさもあらじとや