古典和歌stream

折らばやと何思はまし梅の花
なつかしからぬ匂ひなりせば

歌の意味
折り取りたいなどとどうして思ったりしようか、梅の花よ。もしその香りが心ひかれるものでなかったならば。
鑑賞
恋歌 595

詞書「寄梅恋」
 題「寄梅恋」は、梅に寄せて恋を詠む題である。梅の花の香りが心ひかれるものでなければ、折り取りたいなどと思うこともないだろう、と詠む。梅の花に恋しい人を重ね、その人の魅力ゆえに思いを寄せずにはいられない心を、反実仮想によって表している。

 初句「折らばやと」の「ばや」は自己の願望を表す終助詞で、折り取りたい、の意である。恋しい人を自分のものにしたいという思いを重ねている。
 二句「何思はまし」は、どうして思ったりしようか、の意で、「まし」は結句の「せば」と呼応する反実仮想である。
 三句「梅の花」は呼びかけで、恋しい人を重ねている。題の「梅」に当たる。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「なつかしからぬ」の「なつかし」は、心ひかれる、慕わしい、の意で、そうでない、ということである。
 結句「匂ひなりせば」の「匂ひ」は梅の香りのことで、香りでなかったならば、の意で上の句に返る倒置となっている。

なつかし:心ひかれる、慕わしい
作者
西行
出典
山家集
前の歌
賤の女がすそとる糸に露添ひて 思ひにたがふ恋もするかな
次の歌
行きずりに一枝折りし梅が香の 深くも袖に染みにけるかな