妻恋ひて人目つつまぬ鹿の音も
うらやむ袖のみさをなるかは
- 歌の意味
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妻を恋い慕って人目もはばからずに鳴く鹿の声さえうらやむ私の袖は、平然としていられようか、いや涙に濡れずにはいられない。
- 鑑賞
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恋歌 602
詞書「寄鹿恋」
題「寄鹿恋」は、鹿に寄せて恋を詠む題である。妻を恋い慕って人目もはばからずに鳴く秋の鹿をうらやましく思う。忍ぶ恋の身では声を上げて泣くこともできず、袖を涙で濡らすほかない、と詠む。声に出して恋を訴えられる鹿と、ひそかに袖を濡らす自分とを対比している。
初句「妻恋ひて」は、妻を恋い慕って、の意で、秋の鹿は妻を求めて鳴くとされた。
二句「人目つつまぬ」は、人目をはばからない、の意である。
三句「鹿の音も」は、鹿の鳴き声も、の意で、題の「鹿」に当たる。
四句「うらやむ袖の」は、それをうらやむ私の袖の、の意である。
結句「みさをなるかは」の「みさを」は、平然として変わらないさまのことで、「かは」は反語である。平然としていられようか、いや涙に濡れる、と結ぶ。
みさを:平然として変わらないさま
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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朽ちてただしをればよしや我が袖も 萩の下枝の露によそへて
- 次の歌
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一方に乱るともなき我が恋や 風定まらぬ野辺の刈萱