夕霧の隔てなくこそ思ほゆれ
隠れて君が逢はぬなりけり
- 歌の意味
-
夕霧のような隔てなど何もないと思われるのに、実はあなたが隠れていて逢ってくれないのであった。
- 鑑賞
-
恋歌 604
詞書「寄霧恋」
題「寄霧恋」は、霧に寄せて恋を詠む題である。二人の間には夕霧のような隔てなど何もないと思っていたのに、逢えないのは霧のせいではなく、あなたが自ら隠れて逢ってくれないからであった、と詠む。霧に隔てられているという言い訳を退け、相手のつれなさに気づいた嘆きを表している。
初句「夕霧の」は、夕霧のような、の意で、題の「霧」に当たる。
二句「隔てなくこそ」の「隔て」は二人の間を隔てるもので、係助詞「こそ」が三句の已然形「思ほゆれ」と係り結びをなしている。
三句「思ほゆれ」は、思われる、の意で、「こそ」を受けて已然形で結び、逆接の意味で下の句へ続いている。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
四句「隠れて君が」は、霧に隠れるように、あなたが自ら隠れて、の意で、夕霧の縁で「隠る」を用いている。
結句「逢はぬなりけり」の「なりけり」は、それと気づいた詠嘆で、逢ってくれないのであった、と結ぶ。
へだて:二人の間を隔てるもの
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
一方に乱るともなき我が恋や 風定まらぬ野辺の刈萱
- 次の歌
-
わが涙時雨の雨にたぐへばや 紅葉の色の袖にまがへる