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わが涙時雨の雨にたぐへばや
紅葉の色の袖にまがへる

歌の意味
私の涙を時雨の雨になぞらえたいものだ。紅葉の色と見まがうほどに、袖が紅く染まっている。
鑑賞
恋歌 605

詞書「寄紅葉恋」
 題「寄紅葉恋」は、紅葉に寄せて恋を詠む題である。時雨が木の葉を紅葉させるように、恋の涙が袖を紅く染め、紅葉の色と見まがうほどになっている。だから自分の涙を時雨になぞらえたい、と詠む。血の涙で袖が紅く染まるという恋の歌の表現を、時雨と紅葉の取り合わせに重ねている。

 初句「わが涙」は、私の涙を、の意である。
 二句「時雨の雨に」は、時雨の雨に、の意で、時雨は木の葉を紅葉させるものとされた。
 三句「たぐへばや」の「たぐふ」は、なぞらえる、並べる、の意で、「ばや」は自己の願望を表す。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「紅葉の色の」は、紅葉の色に、の意で、題の「紅葉」に当たる。
 結句「袖にまがへる」の「まがふ」は、見分けがつかないほど似る、の意で、袖が紅葉の色と見まがうほど染まっている、と結ぶ。

たぐふ:並べる、なぞらえる
まがふ:見分けがつかないほど似る
作者
西行
出典
山家集
前の歌
夕霧の隔てなくこそ思ほゆれ 隠れて君が逢はぬなりけり
次の歌
朝ごとに声をとどむる風の音は 夜を経てかかる人の心か