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秋の夜の月や涙をかこつらん
雲なき影をもてやつすとて

歌の意味
秋の夜の月は、私の涙のせいだと恨み言を言っているのだろうか。雲もない澄んだ光を、涙でみすぼらしく曇らせてしまうといって。
鑑賞
恋歌 622

詞書は前の歌に続き「月」
 雲ひとつない秋の夜の月であるのに、恋の涙に曇った目で見るとその光がかすんで見える。月の側からすれば、せっかくの澄んだ光をやつれさせてしまうと、私の涙に恨み言を言っているのだろうか、と詠む。涙で月がかすむことを、月が涙を恨むという形に転じたところに趣向がある。

 初句「秋の夜の」は、秋の夜の、の意で、月の最も美しい季節をいう。
 二句「月や涙を」の係助詞「や」は疑問を表し、三句の連体形「らん」と係り結びをなしている。題の「月」に当たる。
 三句「かこつらん」の「かこつ」は、他のせいにして恨み言を言う、の意である。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「雲なき影を」は、雲もない澄んだ月の光を、の意である。
 結句「もてやつすとて」の「もてやつす」は、みすぼらしく見えるようにする、の意で、涙が月の光をかすませることをいう。上の句に返る倒置となっている。

かこつ:他のせいにして恨み言を言う
もてやつす:みすぼらしく見えるようにする
作者
西行
出典
山家集
前の歌
面影の忘らるまじき別れかな 名残を人の月にとどめて
次の歌
天の原冴ゆるみ空は晴れながら 涙ぞ月の雲になりける