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月を見る心のふしをとがにして
便り得顔に濡るる袖かな

歌の意味
月を見て物思う心の折ふしを口実にして、よい機会を得たとばかりに涙に濡れる袖であることよ。
鑑賞
恋歌 625

詞書は前の歌に続き「月」
 月を見ればもの悲しくなるのは当然であるから、その心の折ふしを口実にして、袖は好都合を得たとばかりに涙に濡れている、と詠む。本当は恋の涙であるのに、月を見て感じ入ったためのように装って泣くことができる、という忍ぶ恋の心を描いている。

 初句「月を見る」は、月を眺める、の意で、題の「月」に当たる。
 二句「心のふしを」の「ふし」は、折、機会、事柄の意で、月を見てもの悲しくなる心の折をいう。
 三句「とがにして」の「とが」は、とがめ立てる理由のことで、ここでは口実にして、の意である。
 四句「便り得顔に」の「便り」は、都合のよい機会のことで、それを得たような顔つきで、の意である。
 結句「濡るる袖かな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、涙に濡れる袖を嘆いて結ぶ。

ふし:折、機会、事柄
とが:とがめ立てる理由、口実
たより:都合のよい機会
作者
西行
出典
山家集
前の歌
物思ふ心のたけぞ知られぬる 夜な夜な月を眺め明かして
次の歌
思ひ出づることはいつともいひながら 月にはたえぬ心なりけり