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思ひ出づることはいつともいひながら
月にはたえぬ心なりけり

歌の意味
恋しい人を思い出すことはいつということもないとはいうものの、月を見るとこらえきれない心であったよ。
鑑賞
恋歌 626

詞書は前の歌に続き「月」
 恋しい人を思い出すのは、いつと決まっているわけではなく、いつでも思い出しているのだが、それでも月を見る時には、こらえきれないほどに思いがあふれてしまう心であった、と詠む。月が恋しさをいっそうかき立てるものであることを、あらためて確かめている。

 初句「思ひ出づる」は、恋しい人を思い出す、の意である。初句は六音の字余りとなっている。
 二句「ことはいつとも」は、いつと決まっているのでもなく、の意で、いつでも思い出していることをいう。
 三句「いひながら」の「ながら」は逆接で、とはいうものの、の意である。
 四句「月にはたえぬ」の「たふ」は、こらえる、我慢する、の意で、月を見るとこらえきれない、ということである。題の「月」に当たる。
 結句「心なりけり」の「なりけり」は気づきの詠嘆で、そういう心であったよ、と結ぶ。

たふ:こらえる、我慢する
作者
西行
出典
山家集
前の歌
月を見る心のふしをとがにして 便り得顔に濡るる袖かな
次の歌
あしひきの山のあなたに君住まば 入るとも月を惜しまざらまし