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世々経ともわすれがたみの思ひ出は
袂に月の宿るばかりか

歌の意味
幾世を経ても忘れがたい形見となる思い出は、袂に月が宿ることばかりなのだろうか。
鑑賞
恋歌 636

詞書は前の歌に続き「月」
 幾世を重ねても忘れることのできない、あの人の形見となる思い出は、涙に濡れた袂に月が宿ることだけなのだろうか、と詠む。恋の思い出として残るものが、月を宿す涙の袂だけであるという寂しさを表している。「わすれがたみ」に、忘れがたい意と形見の意とを掛けている。

 初句「世々経とも」は、幾世を経ても、の意で、「とも」は逆接の仮定条件を表す。
 二句「わすれがたみの」の「わすれがたみ」は、忘れがたい意と、形見の意とを掛けた掛詞である。
 三句「思ひ出は」は、思い出は、の意である。
 四句「袂に月の」は、涙に濡れた袂に月が、の意で、題の「月」に当たる。
 結句「宿るばかりか」の「ばかり」は限定、「か」は疑問で、宿ることだけなのだろうか、と問いかけて結ぶ。

よよ:幾世、長い年月
わすれがたみ:忘れがたい意と、形見の意を掛ける
作者
西行
出典
山家集
前の歌
うち絶えて嘆く涙に我が袖の 朽ちなば何に月を宿さん
次の歌
涙ゆゑくまなき月ぞ曇りぬる あまのはらはらとのみ流れて