涙ゆゑくまなき月ぞ曇りぬる
あまのはらはらとのみ流れて
- 歌の意味
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涙のせいで、一点の陰りもない月が曇ってしまった。天の原を仰ぐ目から、涙がはらはらと流れるばかりで。
- 鑑賞
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恋歌 637
詞書は前の歌に続き「月」
一点の陰りもなく照る月であるのに、恋の涙がはらはらと流れ落ちるばかりで、月が曇って見えてしまう、と詠む。「あまのはらはら」と、大空を意味する「天の原」から涙の流れるさまをいう「はらはら」へと音をつなげ、月を仰ぐ空と流れ落ちる涙とを一続きに表している。四句と結句の切れ目が語の途中にかかる、珍しい句の分け方となっている。
初句「涙ゆゑ」は、涙のために、の意である。
二句「くまなき月ぞ」の「くまなし」は、陰りがない、の意で、係助詞「ぞ」が三句の連体形「ぬる」と係り結びをなしている。題の「月」に当たる。
三句「曇りぬる」は、曇ってしまった、の意で、「ぞ」を受けて連体形で結ぶ。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
四句「あまのはらはら」は、大空を意味する「天の原」と、涙がこぼれ落ちるさまの「はらはら」とを、「はら」の音を重ねてつないでいる。
結句「とのみ流れて」は、はらはらと流れるばかりで、の意で、上の句の理由を示す倒置となっている。
くまなし:陰りがない
あまのはら:広々とした大空
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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世々経ともわすれがたみの思ひ出は 袂に月の宿るばかりか
- 次の歌
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あやにくにしるくも月の宿るかな 夜にまぎれてと思ふ袂に