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あやにくにしるくも月の宿るかな
夜にまぎれてと思ふ袂に

歌の意味
あいにくなことに、はっきりと月が宿ることだ。夜の闇にまぎれて涙を隠そうと思っている袂に。
鑑賞
恋歌 638

詞書は前の歌に続き「月」
 夜の闇にまぎれて人知れず泣こうと思っているのに、その涙に濡れた袂に、あいにくにも月がくっきりと映って、かえって涙を目立たせてしまう、と詠む。忍ぶ恋の涙を、月の光があらわにしてしまう皮肉を捉えている。

 初句「あやにくに」は、あいにくなことに、意地の悪いことに、の意である。
 二句「しるくも月の」の「しるし」は、はっきりしている、の意である。題の「月」に当たる。
 三句「宿るかな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「夜にまぎれてと」は、夜の闇にまぎれて涙を隠そうと、の意である。
 結句「思ふ袂に」は、そう思っている袂に、の意で、三句の「宿る」に返る倒置となっている。

あやにく:あいにく、意地が悪いさま
しるし:はっきりしている
作者
西行
出典
山家集
前の歌
涙ゆゑくまなき月ぞ曇りぬる あまのはらはらとのみ流れて
次の歌
面影に君が姿を見つるより にはかに月の曇りぬるかな