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隔てたる人の心のくまにより
月をさやかに見ぬが悲しさ

歌の意味
私との間を隔てているあの人の心の陰りのために、月をはっきりと見ることができないのが悲しい。
鑑賞
恋歌 642

詞書は前の歌に続き「月」
 私との間に隔てを置くあの人の、冷たい心の陰りのせいで、涙があふれて月をはっきりと見ることができないのが悲しい、と詠む。「くま」は月の陰りをいう語で、相手の心の陰りと月の見えなさとを結びつけている。

 初句「隔てたる」は、私との間に隔てを置いている、の意である。
 二句「人の心の」は、あの人の心の、の意である。
 三句「くまにより」の「くま」は、陰り、隠れた所、の意で、月の縁語である。相手の心の陰りによって、ということである。
 四句「月をさやかに」の「さやか」は、はっきりしている、の意である。題の「月」に当たる。
 結句「見ぬが悲しさ」は、見ることができないのが悲しい、の意で、体言止めで結ぶ。

くま:陰り、隠れた所
さやか:はっきりしている
作者
西行
出典
山家集
前の歌
秋の月物思ふ人のためとてや 憂き面影に添へて出づらん
次の歌
涙ゆゑ月は曇れる月なれば 流れぬ折ぞ晴れ間なりける