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物思ふ心のくまをのごひうてて
曇らぬ月を見るよしもがな

歌の意味
物思いをする心の陰りをすっかり拭い捨てて、曇りのない月を見るすべがあればよいのに。
鑑賞
恋歌 645

詞書は前の歌に続き「月」
 恋の物思いにふける心の陰りを拭い捨てて、曇りのない月を見ることができればよいのに、と詠む。月が曇って見えるのは心の陰りのためであると自覚し、それを払い去りたいと願っている。
 前歌が自分の心から月を曇らせてしまったと嘆いたのを受け、この歌は心の陰りを拭い去って澄んだ月を見たいと願っており、同じ心の働きを裏返して詠んでいる。

 初句「物思ふ」は、物思いをする、恋に思い悩む、の意である。
 二句「心のくまを」の「くま」は、陰り、隠れた所、の意で、月の縁語である。
 三句「のごひうてて」の「のごふ」は拭う、「うつ」は捨てる、の意で、すっかり拭い去って、ということである。
 四句「曇らぬ月を」は、曇りのない月を、の意で、題の「月」に当たる。
 結句「見るよしもがな」の「よし」は手段、方法のことで、「もがな」は願望の終助詞である。見るすべがあればよいのに、と結ぶ。

のごふ:拭う
うつ:捨てる
よし:手段、方法
作者
西行
出典
山家集
前の歌
くまもなき折しも人を思ひ出でて 心と月をやつしつるかな
次の歌
恋しさや思ひ弱ると眺むれば いとど心を砕く月影