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あさの月信太の森の千枝よりも
繁きなげきやくまなかるらん

歌の意味
明け方の月が隈なく照らしているのは、信太の森の千枝よりも繁った私の嘆きなのだろうか。
鑑賞
恋歌 651

詞書は前の歌に続き「月」
 信太の森は和泉国の歌枕で、千もの枝に分かれた楠があることで知られた。その千枝よりもさらに繁った自分の嘆きを、明け方まで残る月が余すところなく照らし出しているのだろうか、と詠むものと解される。「なげき」の「き」に「木」を響かせ、森の千枝と対比させて、夜通し物思いに沈んだ嘆きの多さを表している。

 初句「あさの月」は、明け方の空に残る月の意と解される。題の「月」に当たる。
 二句「信太の森の」の「信太の森」は和泉国の歌枕で、千枝に分かれた楠があることで知られた。
 三句「千枝よりも」は、千の枝よりも、の意で、楠の枝の多さをいう。
 四句「繁きなげきや」の「なげき」は、嘆きの意に「木」を響かせた掛詞で、森の千枝と対比されている。係助詞「や」は結句の「らん」と係り結びをなしている。
 結句「くまなかるらん」の「くまなし」は、陰りがない、余すところがない、の意で、月が隈なく照らしているのだろうか、と結ぶ。

しのだのもり:和泉国の歌枕、千枝に分かれた楠で知られる
なげき:嘆きの意に、木の意を響かせる
くまなし:陰りがない、余すところがない
作者
西行
出典
山家集
前の歌
天雲のわりなき隙を漏る月の 影ばかりだにあひ見てしかな
次の歌
思ひ知る人ありあけの夜なりせば つきせず身をば恨みざらまし