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山賤の荒野をしめて住み初むる
かただよりなる恋もするかな

歌の意味
山賤が荒れ野を自分の土地と定めて住みはじめるような、片方にだけ頼るところのある片思いの恋をすることだ。
鑑賞
恋歌 655

詞書は前の歌に続き「恋」
 山に住む身分の低い者が、荒れ野の一角を自分の土地と定めて住みはじめる。そのように、相手の気持ちも知らず、自分の側からだけ一方的に思いを定めた、頼りない片思いの恋をしている、と詠む。荒れ野に住みつく山賤の心細いさまに、片思いの頼りなさを重ねている。

 初句「山賤の」の「山賤」は、山に住む身分の低い者、きこりや猟師などのことである。
 二句「荒野をしめて」の「しむ」は、自分の領有のしるしをつける、占める、の意である。
 三句「住み初むる」は、住みはじめる、の意で、ここまでの三句で片思いのさまをたとえている。
 四句「かただよりなる」の「かただより」は、一方にだけ頼るところがある、の意と解され、片思いを表している。
 結句「恋もするかな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、そのような恋もすることだ、と嘆いて結ぶ。本巻の第五百九十四首と同じ結句である。

やまがつ:山に住む身分の低い者
しむ:自分の領有のしるしをつける、占める
かただより:一方にだけ頼るところがあること
作者
西行
出典
山家集
前の歌
うち向かふそのあらましの面影を まことになして見るよしもがな
次の歌
常磐山椎の下柴刈り捨てん 隠れて思ふかひのなきかと