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常磐山椎の下柴刈り捨てん
隠れて思ふかひのなきかと

歌の意味
常磐山の椎の木の下に生える柴を刈り捨ててしまおう。隠れて思っていても、そのかいがないのかと思って。
鑑賞
恋歌 656

詞書は前の歌に続き「恋」
 常磐山の椎の木の下に生い茂る柴を刈り捨ててしまおう。その陰に隠れるようにひそかに思い続けていても、何のかいもないのかと思うので、と詠む。常緑の常磐山の木陰に隠れる柴に、人目を忍んで思い続ける自分の恋を重ね、それを刈り捨てて思いをあらわにしようとする心を表している。
 本巻の第六百五十三首で示された、思いを知らせてから身を恨もうという決意と通じ合う一首である。

 初句「常磐山」は山城国の歌枕で、常緑の「常磐」の名を持つ山である。
 二句「椎の下柴」の「下柴」は、木の下に生える柴のことで、木陰に隠れるものとして詠まれている。
 三句「刈り捨てん」の「ん」は意志で、刈り捨ててしまおう、の意である。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「隠れて思ふ」は、人目に隠れてひそかに思う、の意で、二句の「下柴」が木陰に隠れることと響き合っている。
 結句「かひのなきかと」は、かいがないのかと思って、の意で、上の句の理由を示す倒置となっている。

ときはやま:山城国の歌枕
したしば:木の下に生える柴
かひ:効果、値打ち
作者
西行
出典
山家集
前の歌
山賤の荒野をしめて住み初むる かただよりなる恋もするかな
次の歌
嘆くとも知らばや人のおのづから あはれと思ふこともあるべき