古典和歌stream

何となくさすがに惜しき命かな
ありへば人や思ひ知るとて

歌の意味
なんとなく、やはり惜しい命であることよ。生き長らえていれば、あの人も私の思いを分かってくれるかと思って。
鑑賞
恋歌 658

詞書は前の歌に続き「恋」
 恋の苦しみに、もう命などどうなってもよいと思いながらも、なんとなくやはり命が惜しいと感じる。それは、生き長らえていれば、いつかあの人も私の思いを分かってくれるかもしれないと思うからだ、と詠む。絶望の中にも消えない、かすかな望みを捉えている。
 新古今集の恋歌二に収められている。

 初句「何となく」は、なんとなく、これといった理由もなく、の意である。
 二句「さすがに惜しき」の「さすがに」は、そうはいうものの、やはり、の意で、命などどうでもよいと思いながらも、ということである。
 三句「命かな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「ありへば人や」の「ありふ」は、生き長らえる、の意である。係助詞「や」は疑問を表す。
 結句「思ひ知るとて」は、思い知るかと思って、の意で、上の句の理由を示す倒置となっている。

ありふ:生き長らえる
さすがに:そうはいうものの、やはり
作者
西行
出典
山家集
前の歌
嘆くとも知らばや人のおのづから あはれと思ふこともあるべき
次の歌
何ゆゑか今日まで物を思はまし 命にかへて逢ふ世なりせば