何ゆゑか今日まで物を思はまし
命にかへて逢ふ世なりせば
- 歌の意味
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もし命と引き換えに逢える仲であったならば、どうして今日まで物思いをしていただろうか。
- 鑑賞
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恋歌 659
詞書は前の歌に続き「恋」
もし命と引き換えにしてでも逢えるような仲であったならば、とうに命を投げ出して逢っていただろうから、今日まで物思いを続けることもなかっただろう、と詠む。命を差し出しても逢えない恋のつらさを、反実仮想によって表している。
前歌が生き長らえて相手に思い知らせたいと命を惜しんだのに対し、この歌は命と引き換えにしてでも逢いたいと願っており、命をめぐって二首が対をなしている。
初句「何ゆゑか」は、どうして、の意で、係助詞「か」は反語を表し、三句の「まし」と係り結びをなしている。
二句「今日まで物を」は、今日まで物思いを、の意である。
三句「思はまし」の「まし」は反実仮想で、物思いをしていただろうか、いやしなかっただろう、の意である。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
四句「命にかへて」は、命と引き換えにして、の意である。
結句「逢ふ世なりせば」の「世」は男女の仲のことで、「せば」は反実仮想の条件である。逢える仲であったならば、の意で、上の句に返る倒置となっている。
よ:男女の仲
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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何となくさすがに惜しき命かな ありへば人や思ひ知るとて
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あやめつつ人知るとてもいかがせん 忍びはつべき袂ならねば