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物思へば袖に流るる涙川
いかなるみをに逢ふ瀬なりなん

歌の意味
物思いをするので袖に流れる涙の川は、どのような水脈で逢う瀬となるのだろうか。どのような身の上になれば、あの人と逢えるのだろうか。
鑑賞
恋歌 663

詞書は前の歌に続き「恋」
 恋の物思いのために袖を流れる涙の川は、いったいどのような水脈をたどって、あの人と逢う瀬にたどり着くのだろうか、と詠む。「みを」に水脈と身をとを掛け、「瀬」を涙川の縁語として、涙の川の流れの行方に、逢瀬の叶う日を問いかけている。
 前の二首に続いて涙を川にたとえ、この歌では涙川の流れの先に逢う瀬を求めており、三首が涙川によって詠み継がれている。

 初句「物思へば」は、物思いをするので、の意である。
 二句「袖に流るる」は、袖に流れる、の意である。
 三句「涙川」は、涙が多く流れるさまを川にたとえた語で、前の二首から続く語である。
 四句「いかなるみをに」の「みを」は、川の水脈の意と、わが身をの意とを掛けた掛詞である。
 結句「逢ふ瀬なりなん」の「逢ふ瀬」は恋人と逢う機会のことで、「瀬」は涙川の縁語である。「なん」は推量で、逢う瀬となるのだろうか、と問いかけて結ぶ。

みを:川の水脈の意と、わが身をの意を掛ける
あふせ:恋人と逢う機会
作者
西行
出典
山家集
前の歌
しばしこそ人目つつみにせかれけれ 果ては涙やなるたきの川
次の歌
憂きにだになどなど人を思へども 叶はで年の積もりぬるかな