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何せんにつれなかりしを恨みけん
逢はずはかかる思ひせましや

歌の意味
どうして、以前あの人が冷淡であったことを恨んだりしたのだろう。逢わなかったならば、このような物思いをしただろうか。
鑑賞
恋歌 666

詞書は前の歌に続き「恋」
 逢う前に、あの人の冷淡さを恨んでいたのは、いったい何のためだったのだろう。逢わなかったならば、今のようなつらい物思いはしなかっただろうに、と詠む。逢ってからのほうがかえって苦しいことに気づき、かつての恨みを悔やんでいる。
 前歌が馴れたゆえのつらさを詠んだのを受け、この歌は逢ったがゆえの物思いを詠んでおり、逢う前と逢った後とを比べる趣向が続いている。

 初句「何せんに」は、何のために、どうして、の意である。
 二句「つれなかりしを」の「つれなし」は、冷淡だ、こちらの思いに応えない、の意で、逢う前の相手の冷淡さをいう。
 三句「恨みけん」の「けん」は過去推量で、恨んだのだろう、の意である。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「逢はずはかかる」は、逢わなかったならばこのような、の意である。
 結句「思ひせましや」の「まし」は反実仮想、「や」は反語で、物思いをしただろうか、いやしなかっただろう、と結ぶ。

なにせんに:何のために、どうして
つれなし:冷淡だ、こちらの思いに応えない
作者
西行
出典
山家集
前の歌
なかなかに馴れぬ思ひのままならば 恨みばかりや身に積もらまし
次の歌
むかはらば我が嘆きの報いにて 誰ゆゑ君が物を思はん