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かきくらす涙の雨の脚しげみ
盛りに物の嘆かしきかな

歌の意味
空を暗くかき曇らせて降る雨のような涙の、降りしきる勢いが激しいので、今が盛りとばかりに物思いが嘆かわしいことよ。
鑑賞
恋歌 670

詞書は前の歌に続き「恋」
 空を暗くかき曇らせて降りしきる雨のように、涙が激しく流れ続けるので、今がまさに盛りであるかのように、恋の物思いが嘆かわしく募ってくる、と詠む。涙の雨の勢いの激しさに、物思いの盛りを重ねている。
 前歌の「袂の雨の脚添ひて」を受けて、この歌も「涙の雨の脚しげみ」と涙を雨にたとえており、雨の勢いが増してゆくさまを詠み継いでいる。

 初句「かきくらす」の「かきくらす」は、空を暗くする、心を暗くする、の意である。
 二句「涙の雨の」は、雨のように降る涙の、の意である。
 三句「脚しげみ」の「雨の脚」は雨の降る勢いのことで、「み」は原因や理由を表す接尾語である。勢いが激しいので、の意である。
 四句「盛りに物の」の「盛り」は、物事が最も勢いを増している時のことである。
 結句「嘆かしきかな」の「嘆かし」は、嘆かわしい、の意で、「かな」は詠嘆の終助詞である。

かきくらす:空を暗くする、心を暗くする
あめのあし:雨の降る勢い
さかり:物事が最も勢いを増している時
作者
西行
出典
山家集
前の歌
日をふれば袂の雨の脚添ひて 晴るべくもなき我が心かな
次の歌
物思へどもかからぬ人もあるものを あはれなりける身の契りかな