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なほざりの情けは人のあるものを
絶ゆるは常のならひなれども

歌の意味
通りいっぺんの情けくらいは、あの人にもあるはずなのに。仲が絶えるのは世の常の習いではあるけれども。
鑑賞
恋歌 672

詞書は前の歌に続き「恋」
 男女の仲が絶えてしまうのは世の常であるけれども、それでもせめて通りいっぺんの情けくらいは、あの人にもあってよいはずなのに、と詠む。仲が絶えることはあきらめながらも、何の情けもかけてくれない相手の冷たさを恨んでいる。
 前歌の三句「あるものを」と同じ句を三句に置き、他の人との比較から相手の情けのなさへと思いを移している。

 初句「なほざりの」の「なほざり」は、いいかげんなこと、通りいっぺんのことである。
 二句「情けは人の」の「情け」は思いやりのことで、「人」は恋の相手である。
 三句「あるものを」の「ものを」は逆接の接続助詞で、あるはずなのに、の意である。前歌の三句と同じ句である。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「絶ゆるは常の」の「絶ゆ」は男女の仲が途絶えることで、「常」は世の常のことである。
 結句「ならひなれども」の「ならひ」は習い、慣例のことで、習いではあるけれども、と言いさして結び、上の句に返る倒置となっている。

なほざり:いいかげんなこと、通りいっぺんのこと
ならひ:習い、慣例
作者
西行
出典
山家集
前の歌
物思へどもかからぬ人もあるものを あはれなりける身の契りかな
次の歌
何とこは数まへられぬ身のほどに 人を恨むる心なりけん