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何とこは数まへられぬ身のほどに
人を恨むる心なりけん

歌の意味
いったいこれはどうしたことか、人並みにも数えられない身のほどでありながら、あの人を恨む心になったのだろう。
鑑賞
恋歌 673

詞書は前の歌に続き「恋」
 人並みに数えられることもない、取るに足りない身のほどでありながら、どうしてあの人を恨むような心になってしまったのだろう、と自らをいぶかる歌である。身分の差をわきまえながらも、恨まずにはいられない恋心の不可解さを見つめている。
 前歌が相手の情けのなさを恨んだのを受け、この歌はその恨む心そのものを省みており、本巻の第五百九十首の「身のほど知らず人を恨みん」と同じ趣向を、自問の形で詠んでいる。

 初句「何とこは」の「こは」は、これは、の意で、いったいこれはどうしたことか、と驚きいぶかる気持ちを表す。
 二句「数まへられぬ」の「数まふ」は、人並みに数に入れる、の意で、人並みに扱われない、ということである。
 三句「身のほどに」は、身のほどでありながら、の意である。
 四句「人を恨むる」は、あの人を恨む、の意である。
 結句「心なりけん」の「けん」は過去の原因推量で、そういう心になったのだろう、といぶかって結ぶ。

かずまふ:人並みに数に入れる
みのほど:自分の身分や立場
作者
西行
出典
山家集
前の歌
なほざりの情けは人のあるものを 絶ゆるは常のならひなれども
次の歌
憂きふしをまづ思ひ知る涙かな さのみこそはと慰むれども