なかなかに馴るるつらさに比ぶれば
疎き恨みはみさをなりけり
- 歌の意味
-
なまじ親しく馴れてからのつらさに比べると、疎遠であった頃の恨みは、まだ平静でいられるものであった。
- 鑑賞
-
恋歌 681
詞書は前の歌に続き「恋」
なまじ親しく馴れ合う仲になってからのつらさに比べると、まだ疎遠であった頃に抱いていた恨みなどは、平静でいられる程度のものであった、と詠む。親しくなったがゆえの苦しみの深さを、かつての恨みと比べて表している。
本巻の第六百六十五首の「馴れぬ思ひのままならば」と同じく、馴れることのつらさを詠み、逢う前と後とを比べる趣向を繰り返している。
初句「なかなかに」は、かえって、なまじっか、の意である。
二句「馴るるつらさに」の「馴る」は、親しくなる、馴れ親しむ、の意で、親しくなってからのつらさに、ということである。
三句「比ぶれば」は、比べると、の意である。
四句「疎き恨みは」の「疎し」は、親しくない、疎遠だ、の意で、二句の「馴るる」と対照をなしている。
結句「みさをなりけり」の「みさを」は、平然として変わらないさまのことで、「なりけり」は気づきの詠嘆である。
なる:親しくなる、馴れ親しむ
うとし:親しくない、疎遠だ
みさを:平然として変わらないさま
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
身を知れば人のとがには思はぬに 恨み顔にも濡るる袖かな
- 次の歌
-
人は憂し嘆きは露も慰まず さはこはいかにすべき心ぞ