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心ざしありてのみやは人を問ふ
情けはなどと思ふばかりぞ

歌の意味
深い愛情があるときだけ人を訪ねるものだろうか、いやそうではない。せめて情けくらいは、なぜかけてくれないのかと思うばかりだ。
鑑賞
恋歌 687

詞書は前の歌に続き「恋」
 人を訪ねるのは、深い愛情があるときだけとはかぎらない。愛情はなくとも、せめて通りいっぺんの情けくらいはかけてくれてもよいのに、どうしてそれさえないのかと思うばかりだ、と詠む。深い愛を求めることはあきらめながら、わずかな情けさえかけてくれない相手を恨んでいる。
 本巻の第六百七十二首の「なほざりの情けは人のあるものを」と通い合い、せめてもの情けを求める心を詠んでいる。

 初句「心ざし」の「心ざし」は、相手を思う愛情のことである。
 二句「ありてのみやは」の「やは」は反語を表す係助詞で、三句の連体形「問ふ」と係り結びをなしている。愛情があるときだけだろうか、の意である。
 三句「人を問ふ」の「問ふ」は、訪ねる、便りをする、の意で、「やは」を受けて連体形で結ぶ。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「情けはなどと」の「情け」は思いやりのことで、「など」は、どうして、の意である。情けはどうしてないのかと、ということである。
 結句「思ふばかりぞ」は、思うばかりだ、の意で、「ぞ」は強く言い切る気持ちを表して結ぶ。

こころざし:相手を思う愛情
とふ:訪ねる、便りをする
作者
西行
出典
山家集
前の歌
難波潟波のみいとど数添ひて うらみの隙や袖の乾かん
次の歌
なかなかに思ひ知るてふ言の葉は 問はぬに過ぎて恨めしきかな