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なかなかに思ひ知るてふ言の葉は
問はぬに過ぎて恨めしきかな

歌の意味
なまじ「あなたの気持ちはよく分かる」という言葉は、何の便りもくれないことよりも、かえって恨めしいことだ。
鑑賞
恋歌 688

詞書は前の歌に続き「恋」
 相手から「あなたの思いはよく分かっている」という言葉をかけられるのは、何の便りもないよりも、かえって恨めしい、と詠む。気持ちを分かっていながら応えてはくれない相手の言葉が、無視されるよりもいっそう心を傷つけることを表している。
 前歌が、せめて情けをかけてほしいと願ったのを受け、この歌は情けの言葉がかえって恨めしいと詠んでおり、二首で情けをめぐる心の揺れを示している。

 初句「なかなかに」は、かえって、なまじっか、の意である。
 二句「思ひ知るてふ」の「てふ」は「といふ」がつまった形で、思い知っているという、の意である。
 三句「言の葉は」は、言葉は、の意である。
 四句「問はぬに過ぎて」の「問ふ」は、訪ねる、便りをする、の意で、便りをくれないこと以上に、ということである。
 結句「恨めしきかな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、恨めしいことだ、と結ぶ。

てふ:といふ
ことのは:言葉
作者
西行
出典
山家集
前の歌
心ざしありてのみやは人を問ふ 情けはなどと思ふばかりぞ
次の歌
などか我ことのほかなる嘆きせで みさをなる身に生まれざりけん