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などか我ことのほかなる嘆きせで
みさをなる身に生まれざりけん

歌の意味
どうして私は、人並み外れた嘆きなどすることもなく、平然としていられる身に生まれてこなかったのだろう。
鑑賞
恋歌 689

詞書は前の歌に続き「恋」
 どうして自分は、これほどまでに並外れた嘆きをすることなく、心穏やかに平然としていられる身に生まれてこなかったのだろう、と嘆く歌である。恋に苦しむ自分の性分そのものを恨み、生まれつきの宿命として嘆いている。
 本巻の第六百八十一首の「みさをなりけり」と同じ「みさを」の語を用い、平静でいられない身を嘆いている。

 初句「などか我」の「などか」は、どうして、の意で、係助詞「か」が結句の連体形「けん」と係り結びをなしている。
 二句「ことのほかなる」は、並外れた、格別な、の意である。
 三句「嘆きせで」の「で」は打消の接続助詞で、嘆きをしないで、の意である。
 四句「みさをなる身に」の「みさを」は、平然として変わらないさまのことである。
 結句「生まれざりけん」の「けん」は過去の原因推量で、生まれなかったのだろう、の意で、「か」を受けて連体形で結ぶ。

ことのほか:並外れたこと、格別
みさを:平然として変わらないさま
作者
西行
出典
山家集
前の歌
なかなかに思ひ知るてふ言の葉は 問はぬに過ぎて恨めしきかな
次の歌
汲みて知る人もあらなんおのづから ほりかねの井の底の心を