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磯の間に波荒げなる折々は
うらみをかづく里の海人

歌の意味
磯の間に波が荒々しく立つ折々には、浦に潜ることもできず、恨みを身にかぶる、里の海人であることよ。
鑑賞
恋歌 693

詞書は前の歌に続き「恋」
 磯の間に波が荒々しく立つ時には、海人は海に潜って漁をすることもできず、浦を見ては恨めしく思うばかりである。そのように、思うにまかせない恋に恨みを抱える自分を、里の海人の姿に託していると解される。「うらみ」に恨みと浦見とを、「かづく」に海に潜る意と身にかぶる意とを掛け、海人の暮らしの言葉で恋の恨みを詠んでいる。
 本巻の第六百八十三首、第六百八十六首に続いて「うらみ」に浦見を掛け、海辺の情景に恨みを託す趣向を重ねている。

 初句「磯の間に」は、磯の岩の間に、の意である。
 二句「波荒げなる」の「荒げなり」は、荒々しい様子である、の意である。
 三句「折々は」は、その時々には、の意である。
 四句「うらみをかづく」の「うらみ」は、恨みの意と、浦を見る意の浦見とを掛けた掛詞である。「かづく」は、海に潜る意と、身にかぶる意とを掛けた掛詞である。
 結句「里の海人」は、海辺の里に住む漁師のことで、体言止めで結ぶ。

あらげなり:荒々しい様子である
うらみ:恨みの意と、浦を見る意を掛ける
かづく:海に潜る意と、身にかぶる意を掛ける
あま:海に潜って漁をする人
作者
西行
出典
山家集
前の歌
涙川逆巻くみをの底深み みなぎりあへぬ我が心かな
次の歌
瀬戸口にたける潮の大淀み 淀む年日もなき涙かな