- 歌の意味
-
瀬戸の口で猛り立つ潮にも大きく淀む時があるが、私の涙は淀む年も日もなく流れ続けることだ。
- 鑑賞
-
恋歌 694
詞書は前の歌に続き「恋」
狭い瀬戸の口で激しく猛り立つ潮にも、流れが大きく淀む時がある。しかし自分の涙は、淀む年も日もなく流れ続けている、と詠むものと解される。上の句の潮のさまから「淀む」の語を導き、激しい潮流にさえある休みが、恋の涙にはないことを対比している。
初句「瀬戸口に」の「瀬戸」は、陸地に挟まれて海が狭くなった所のことで、その入り口に、の意である。
二句「たける潮の」の「たける」は、猛り立つ、勢いよく荒れる、の意である。
三句「大淀み」は、潮の流れが大きく淀むことの意と解される。ここまでの三句が四句の「淀む」を導いている。
四句「淀む年日も」は、淀む年も日も、の意で、三句と同じ語を重ねている。
結句「なき涙かな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、淀むことなく流れ続ける涙を嘆いて結ぶ。
せと:陸地に挟まれて海が狭くなった所
たける:猛り立つ、勢いよく荒れる
よどむ:水の流れが滞る
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
磯の間に波荒げなる折々は うらみをかづく里の海人
- 次の歌
-
東路やあひの中山ほど狭み 心の奥の見えばこそあらめ